DFG日本代表部、開設10周年を迎える

日本代表部、開設10周年記念の夕食会(10月8日、東京)

DFGは、アジア地域における連携の戦略拠点として、インドと日本に国外事務所を、中国に中国・ドイツ研究振興センターを設置しています。

DFG日本代表部は、研究者間の協力、日本のファンディング機関との連携を強化・拡充する目的で、2009年4月に開設されました。日本における最重要パートナーは、日本学術振興会(JSPS)と科学技術振興機構(JST)、2014年に設立された日本医療研究開発機構(AMED)、そして研究に注力している大学です。
開設10周年記念の夕食会では、日本におけるDFGの存在が両国の連携の深化に貢献している様子が伺えました。会には、JSPSの里見進理事長、JSTの濱口道成理事長をはじめ、京都大学、早稲田大学、東北大学の国際連携を担当する副学長などが、そして事務所開設時にDFG会長を務めていた、ライプニッツ協会のマティアス・クライナー会長(Prof. Dr. Matthias Kleiner)も列席いただきました。

この夕食会には、10周年以外の目的もありました。DFG会長としての日本訪問が最後となるシュトローシュナイダー会長(Prof. Dr. Peter Strohschneider)は、DFGの設立時を振り返る短いスピーチにおいて、日独両国の学術・学術政策の結び付きの強さを物語る歴史的なエピソードに触れました。DFGの前身であるドイツ学術扶助会(Notgemeinschaft der Deutschen Wissenschaft)は、第一次大戦の敗戦により厳しい試練に立たされていた学術・研究を支援するため、1920年に設立されました。その資金を支えたのが日本の事業家で、大学の創始者でもある星一(はじめ)であり、100人を超えるドイツの若手研究者が「星基金」の恩恵にあずかったのです。星が創設した大学(現在の星薬科大学)の中西友子学長からも、両国の学術界の結び付きの歴史的意義を日本語とドイツ語でお話しいただきました。

続いて、JSPSの前理事長・安西祐一郎氏が、DFGとの信頼関係に基づく協力に言及しました。DFGとJSPSは、日独共同大学院プログラム(IGK)やジョイントセミナーなどの2国間プログラムを通じた支援にとどまらず、国際的なシーンでもパートナーを組んでいます。両者が国際レベルにおいても共通のスタンダードや価値観を打ち出せ、国際グローバルルサーチカウンシル(GRC)などで国際的な学術政策の課題に対処できるのは、そうした多様な協力関係があるからといえます。
科学技術の拠点である両国は、シュトローシュナイダー会長が訴える「テーマや政策上のアジェンダに縛られない基礎研究」「優先すべきは、助成率や経済的な期待といった基準よりも研究の質」といった価値観や、安西氏が強調する倫理的な観点を共有しています。
安西氏には、開設当初から日本代表部に多大なご支援をいただきました。また、2018年にドイツ科学・イノベーションフォーラム東京(DWIH-Tokyo)が開催した第1回人工知能に関する日独仏合同シンポジウムの立ち上げでも中心的な役割を果たされました。
日独仏合同シンポジウムの際には、DFG、JST、フランスのファンディング機関であるフランス国立研究機構(ANR)が会合を開き、2019年6月に人工知能分野の共同研究に関する合意文書を交わしました。3国共同研究の公募は2019年10月25日に締め切られ、2020年に採択プロジェクトがスタートします。
このイニシアティブは、国際的な科学・学術研究への助成に携わるキーパーソンのネットワーク化がいかに重要であるかを示す好例といえます。

また、日本代表部の初代代表を務めたイリス・ヴィーツォレク氏(Dr. Iris Wieczorek)は開設当初をこう振り返りました。「深い協力関係を継続していくには、とりわけ人が大切です。日本の学術システムへアプローチするにはコネクションが不可欠であり、日本代表部開設後の大半の時間はネットワーク作りと日本の学術団体の情報収集に費やされました。そして、ワークショップやDFGライプニッツ講演会などのイベント、大学訪問、ドイツ学術交流会(DAAD)やドイツ科学・イノベーションフォーラム東京、ドイツ日本研究所(DIJ)など日本に拠点を持つドイツの組織との連携を通じて、日本の関係者とのつながりを深めていきました」。

次に、日本代表部の新代表となったイングリット・クルスマン(Dr. Ingrid Krüßmann)が、アジア太平洋地区におけるダイナミックな変化を背景とする今後の連携構想を語りました。中国・ドイツ研究振興センタードイツ所長を5年間務めるなど、アジアエリアでの連携に長年の経験を有するクルスマン代表はスピーチで、「日本代表部が今後注力していくのは、メガエリアとしてのアジア全体を視野に入れた2国間連携」と述べ、「日本のパートナーと共に既存の助成手段を創造的かつ柔軟に組み合わせて、このエリアの連携を強化・拡充していく所存です」と締めくくりました。将来的には、2国間連携を超える多国間連携も強化されていくことでしょう。

夕食会の進行役は、DFGボン本部国際交流部のヨォーク・シュナイダー部長(Dr. Jörg Schneider)が務めました。シュナイダー部長の日本代表部代表の任期は8月で終了しましたが、毎年10月に京都でSTSフォーラムに合わせて開催されるファンディング機関長会合(FAPM)の関連で、今後もJSTとの共同作業に携わります。

この会では、日本でDFGの活動が確実に進展していることを確認し合えました。引き続き、ボンのイングリット・クルスマン代表率いる日本担当チームと日本担当のラウル・ヴァーグナー(Raoul Wagner)、そして東京の長谷彩希副代表、ミラ・バウアザックス(Myra Bauersachs)、佐藤愛子が日本におけるDFGの活動を進めていきます。