2016年ライプニッツ受賞者ベンヤミン・リスト先生が2021年ノーベル化学賞受賞

2016年のゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞受賞者であるリスト先生が、デイヴィッド・マクミラン先生とともに不斉有機触媒の研究開発の功績が称えられ、今年のノーベル賞化学賞を受賞されました。

DFGは、2021年ノーベル化学賞を受賞されたベンヤミン・リスト先生に祝意を表明します。
マックス・プランク石炭研究所に在籍するリスト先生は、イギリス出身のデイヴィッド・マクミラン先生と共に化学反応を促進する不斉有機触媒の研究の功績が称えられ、今年のノーベル化学賞を受賞しました。より地球にやさしい医薬品や製品の製造の助けとなるものです。

DFGの会長カティア・ベッカーは、「DFGより触媒と触媒研究の新たな分野を切り開いたベンヤミン・リスト先生に心よりお祝い申し上げます。2016年DFGライプニッツ賞もこの先駆的な成果を称えての授与でありました。」と祝福の意を述べました。

リスト先生のDFGライプニッツ賞も不斉有機触媒の開発に対して授与されたものです。助教授として、プロリン触媒による分子間アルドール反応を発見し、それは化学製品の製造において、初めて金属ではなく天然素材を触媒として使う有機触媒作用の基礎となるもので、他の産業技術にもすぐに応用できるものでした。ベンヤミン・リスト先生は当時からこの研究の方向性に大きな意義があると認識し、コーディネータとして、DFGのプライオリティプログラム「有機触媒」を立ち上げています。有機触媒は、通常、標準的な金属触媒よりも毒性が低く、簡単に回収できることから、より持続的で資源効率の高い化学に貢献します。リスト先生は、新たな有機触媒とその反応だけでなく、さらに不斉触媒と繊維-有機触媒の基礎となる新しい原理を発見、開発しました。これらは、例えば、水の供給が遮断された場所での処理に役立つものです。

1985年からDFGが授与しているゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞の受賞後にノーベル賞受賞したのは、リスト先生で10人目となります。これまでにハルムート・ミッヒェル(Hartmut Michel)(化学、1988年)、エルヴィン・ネーエー(Priv.-Doz. Dr. Erwin Neher)とベルト・ザクマン(Priv.-Doz. Dr. Bert Sakman)の研究チーム(生理学・医学、1991年)、クリスティアーネ・ニュスラインフォルハルト(Prof. Dr. Christiane Nüsslein-Vollhard)(生理学・医学、1995年)、テオドール・W・ヘンシュ(Prof. Dr. Theodor W. Hänsch)(物理学、2005年)、ゲルハルト・エルトル(Prof. Dr. Gerhard Ertl)(化学、2007年)、シュテファン・ヘル(Prof. Dr. Stefan Hell)(化学、2007年)、エマニュエル・シャルパンティエ(Professor Dr. Emmanuelle Charpentier)(化学、2020年)が受賞しています。

ベンヤミン・リスト先生は日本との関係も深く、化学反応創成研究拠点(WPI Institute for Chemical Reaction Design and Discovery (WPI-ICReDD))の2018年創設時から主任研究員として、さらに2020年からは北海道大学の特任教授としても在籍されています。