メインナビゲーションにジャンプ コンテンツへ直にジャンプ

ロゴ:ドイツ研究振興協会(DFG) トップページへ Deutsche Forschungsgemeinschaft

ダンス研究の概観〜タンゴにおける動きの伝達からコンテンポラリーダンスのソマティックメソッドまで〜

サイエンスアゴラ、早稲田大学、東京ドイツ文化センターで「ダンス」をテーマとするDFGのライプニッツ講演会(東京)

ピクチャーギャラリーを再生

© DFG

11月の6日から11日にかけて、東京で「ダンス」をテーマとする3講演行われました。これら講演会はDFG日本代表部が「DFGライプニッツ講演会」の一環として企画したもので、世界的に著名な舞踊研究者であり、DFGのゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞の受賞者であるベルリン自由大学演劇学科のガブリエレ・ブラントシュテッター教授(Prof. Dr. Gabriele Brandstetter)が最新のダンス研究における新たな成果を披露しました。また、同大学の若手研究者であるマリアマ・ディアーネ(Mariama Diagne)とホルガー・ハートゥング(Holger Hartung)も発表を行いました。

一連の講演のスタートとなったのは、11月6日の科学技術振機構(JST)のサイエンスアゴラのセッションです。サイエンスアゴラは社会と研究をつなぐためのもので、「つくろう、科学とともにある社会」をモットーに掲げています。ブラントシュテッター教授は「ダンスの動きと伝達における身体と知」と題する大変興味深い講演で、振付家の知識と、タンゴや表現主義舞踊、コンテンポラリーダンスなど多種多少なダンス形式における形象と動きが、どのようにして世代を経て異文化に定着し、ダンサーたちの間で受け継がれていくかについて話しました。ディアーネは「旅するアンサンブル団体〜ヴッパタールとパリにおけるピナ・バウシュのダンスオペラ『オルフェウスとエウリディケ』」と題する発表で、振り付けが時を経て残っていく過程で、どのような媒体が使われるかを提示しました。ハートゥングは「芸術家と研究者の交流〜アーカイブボックス「エキゾチック・ダンス」の再評価」と題するプレゼンテーションで、知の伝達に焦点を当てた発表を行いました。発表では、前世紀の「エキゾチックな」踊り手たちのモノクロ写真を収めたアーカイブボックス「エキゾチック・ダンス」の発見により、国際研究チームは撮影された無名の踊り手たちを確認することができ、それらの写真は歴史的・文化的コンテクストへと移行し、「異国的、エキゾチック」というラベルが外されることとなった経緯を解説しました。

11月9日の2つ目のライプニッツ講演会は、古今東西の舞台芸術の資料の蒐集・保管・展示を手がけている早稲田大学坪内博士記念演劇博物館との共催イベントとなりました。同大学小野記念講堂で行われたブラントシュテッター教授の講演に、多数の研究者、振付家、ダンサーが耳を傾けました。

一連の講演の最後を飾ったのは、東京ドイツ文化センターとフェスティバル/トーキョーとの共催によるシンポジウム「ダンスという概念の現在形」でした。講演者からも参加者からも、今回の文化と学術研究との共同作業は「インスピレーション」と「ノウハウ」をもたらすものであったという声が聞かれました。第一セッションでは、日独の若手研究者4人がそれぞれの研究について発表を行いました。ディアーネの「目に見える魂。ピナ・バウシュやコンテンポラリーダンスにおけるシャドウ・アートとしてのダンス」と題する発表では、ピナ・バウシュと田中奈緒子の作品が取り上げられました。ハートゥングは「風景の亀裂、身体の中の亀裂 - コンテンポラリーダンスにおける運動の形象」と題する発表を行い、Louise Ann Wilsonとベルリンの在住の舞踏ダンサー・関美奈子の作品を紹介しました。また、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助手の越智雄磨は「踊りの主体はどこにあるのか?−オーサーシップから見る振付概念の変容」について、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の中野優子は「コンテンポラリーダンスにおける振付創作過程の解明」について発表しました。第2セッションでは、このシンポジウムのメインとなるブラントシュテッター教授のライプニッツ講演「コンテンポラリーダンスにおける『気付き』、ソマティックメソッド」が行われ、Jefta van DintherやAnne Juren、Sebastian Matthiasの作品が取り上げられました。講演後に行われたラウンドテーブルでは、ブラントシュテッター教授、シンポジウムのファシリテーターを務めた中島那奈子博士(ダンス研究者、ベルリンでダンスドラマトゥルクとしても活躍)、舞踊美学を専門とする専修大学の貫成人教授、振付家のセバスチャン・マティアス(Sebastian Matthias)の4人が、約90名の聴衆も交えて熱く意見を交わし、今後の連携の強化への期待がうかがえました。

今回の東京における3つのイベントは、日独両国の名だたる舞踊研究者と若手研究者が顔を合わせ、ドイツと日本の舞踊界、舞踊研究への関心を確かめ合い、今後につなげていく場となりました。

ブラントシュテッター教授は、舞踊学で初の教授として、歴史・芸術史・文学・音楽学・舞台学を融合させた学際的な研究により、2004年にはDFGのゴットフリート・ヴィルヘルム・ライプニッツ賞を受賞し、ドイツにおける舞踊研究の確立に多大な貢献をされました。ブラントシュテッター教授は同賞の賞金でベルリン自由大学演劇学科にZentrum für Bewegungsforschung(動きの研究センターを設立、2008年には連邦教育研究省(BMBF)の助成により同大学に国際研究研修グループ「Interweaving Performance Cultures」を開設しました。同グループは今や舞踊研究の国際拠点となり、日本を含め世界各地のフェローが研究に励んでいます。

DFG日本代表部では、ライプニッツ賞受賞者を日本にお招きし随時「ライプニッツ講演会」シリーズを開催しています。次回のライプニッツ講演会のテーマは神経科学で、2017年1月に開催されます。