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東京で日独国際シンポジウムを開催 - 研究界のセルフコントロールと責

公正な研究活動の実践および不正への秩序ある対応をテーマとした二国間シンポジウム「研究公正を高める取組について」に130名以上が参加

昨今の日本の研究界には明暗が混在しました。2015年にはノーベル賞を受賞した2人(梶田隆章氏が物理学賞、大村智氏が医学・生理学賞)に研究者たちとともに市民が惜しみない賞賛を寄せた一方で、日本トップクラスの研究機関である理化学研究所での研究不正行為をはじめとするセンセーショナルな事件に市民の研究界に対する信頼が低下し、研究者の間には威信の失墜を懸念する声が広がりました。

DFGの副会長フランク・アルゲバ(右)、DFGの評議会メンバークラウス- ミヒャエル・デバティン(左)

DFGの副会長フランク・アルゲバ(右)、DFGの評議会メンバークラウス- ミヒャエル・デバティン(左)

© JST

研究活動における不誠実な行為の原因究明、それに対して考えられる予防措置の重大性が増している中で、両問題をテーマにした二国間シンポジウムが9月末に東京で開催され、日本とドイツの専門家が「公正な研究活動の実践」の確保に向けたアプローチや実例について意見と情報を交わし合いました。このシンポジウムは、両国の研究界と学術制度が研究活動の不正という問題に直面していることを受けて、ドイツ研究振興協会(DFG)、日本学術振興会(JSPS)、科学技術振興機構(JST)、日本医療研究開発機構(AMED)が「研究公正を高める取組について」共同で開催したもので、130名以上が参加しました。DFGの副会長フランク・アルゲバ(Professor Dr. Frank Allgöwer)は開会の挨拶で、誠実な行為を確固たるものとするには意識向上と若手研究者への適切な教育が不可欠であるとし、「DFGでは研究界の責任を大いに重視しています。その責任は適切な手段でさらに強化する必要があり、本日はその実現に向けた具体的なステップを見ていきたいと思います」と述べました。

不正行為の予防をさらに徹底するため、日本では数年前から国内の研究者に研究倫理に関する基本的、段階的な教育を行っています。例えばJSPSでは、学生の段階から行動規範を学べるように『科学の健全な発展のために』と題する手引きを作成しており、2016年には上級研究者や主任研究員(PI)向けのコースを新設します。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)は、研究者への教育を義務化する意向を示しています。JSTでも独自のeラーニング講座を助成金申請の条件としており、例えばビデオによって危機状況における“正しい”対応を示すオンライン講座のほか、自然科学分野の研究者にはJST独自の専門講習を開催しています。文部科学省(MEXT)でも、体系的な教育に向けて独自のスタンダードプログラムを準備中です。

研究助成機関や省庁の代表は、研究活動の良好な実践に向けた教育に関する各種のテーマに加えて、それぞれの組織的な枠組みづくりに関する対応策、つまりガイドラインの作成(予防)や受付・相談窓口の設置(仲裁)、そして確認された不正行為への秩序ある対応(制裁)についても発表を行いました。意見の交換を通じて、議論文化の確立、告発者の尊重、公正な研究活動の実践の規程の整備、そしてオンブズマン制度の導入といったDFGが今回のシンポジウムで重点的に取り上げたかったポイントが浮かび上がってきました。

DFGの人事・法務部研究公正課課長キルステン・ヒュッテマン

DFGの人事・法務部研究公正課課長キルステン・ヒュッテマン

© JST

DFGの人事・法務部研究公正課課長キルステン・ヒュッテマン(Dr. Kirsten Hüttemann)は、1998年に公開され、2013年に改訂されたDFGの「公正な研究活動の実践」に対する提言を紹介しました。この17項目の推奨は研究界のセルフコントロールの「行動指針の基準」となっており、助成の申請者にはその遵守が義務付けられています。また、DFGの人事・法務部の研究公正課主査クリスティーネ・スピッツァ(Dr. Christine Spitzer)により、DFGがどのように不正行為に対応しているか、どのような制裁的措置を適用できるかが、具体例によって提示されました。日本側からは、総合科学技術・イノベーション会議の「研究不正行為への実効性ある対応に向けて(Addressing Research Misconduct)」(2014年公開)、文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン(Guidelines for Responding to Misconduct in Research)」(2014年改訂)などのガイドラインが紹介されました。いずれも研究機関に対して、不正行為発生時に対応するための独自の仕組みを整備し、その運用をモニタリングするよう求めています。文部科学省は現在、各機関が整備した仕組みをリストアップし、対応策の効果について評価を行っています。

シンポジウムで日本の参加者が最も注目したのは、大学や研究機関に置かれるオンプズマンだけでなく、ドイツ全国に対する「研究界のオンブズマン」委員会を持つドイツのオンブズマン制度でした。オンブズマンを務めるのは自立した第三者専門員で、疑惑の段階で告発を受け付けるため、公正な研究活動の実践における問題の仲裁のサポートにあたれます。研究の不正行為の疑惑が裏付けられた場合は、オンブズマンがその経緯を大学もしくは研究機関の委員会に提出します。シンポジウムの翌日に行われたワークショップでもオンブズマン制度について掘り下げた質問が寄せられ、DFGの評議会メンバークラウス- ミヒャエル・デバティン(Dr. Klaus-Michael Debatin)がこれに答えました。

日本にはドイツのオンブズマン制度に相当するものはありませんが、先に挙げた各種の取り組みに携わる部署や組織が次々に設置されています。文部科学省の「公正な研究活動の推進に関する有識者会議」、日本医療研究開発機構の研究公正・法務部がその一例です。また、早稲田大学では研究者用の窓口として研究倫理オフィスを、東京大学では科学研究の行動規範に係る不正行為に関する窓口を設置しています。ただし、国レベルの窓口の設置や全国統一規範の運用の目処は立っていません。

DFGの人事・法務部の研究公正課主査クリスティーネ・スピッツァ

DFGの人事・法務部の研究公正課主査クリスティーネ・スピッツァ

© JST

シンポジウムで日本の参加者が最も注目したのは、大学や研究機関に置かれるオンプズマンだけでなく、ドイツ全国に対する「研究界のオンブズマン」委員会を持つドイツのオンブズマン制度でした。オンブズマンを務めるのは自立した第三者専門員で、疑惑の段階で告発を受け付けるため、公正な研究活動の実践における問題の仲裁のサポートにあたれます。研究の不正行為の疑惑が裏付けられた場合は、オンブズマンがその経緯を大学もしくは研究機関の委員会に提出します。シンポジウムの翌日に行われたワークショップでもオンブズマン制度について掘り下げた質問が寄せられ、DFGの評議会メンバークラウス- ミヒャエル・デバティン(Dr. Klaus-Michael Debatin)がこれに答えました。

日本にはドイツのオンブズマン制度に相当するものはありませんが、先に挙げた各種の取り組みに携わる部署や組織が次々に設置されています。文部科学省の「公正な研究活動の推進に関する有識者会議」、日本医療研究開発機構の研究公正・法務部がその一例です。また、早稲田大学では研究者用の窓口として研究倫理オフィスを、東京大学では科学研究の行動規範に係る不正行為に関する窓口を設置しています。ただし、国レベルの窓口の設置や全国統一規範の運用の目処は立っていません。

活発な意見交換の締めくくりに、デバティン教授が意識向上と若手研究者への教育に対する日本のアプローチを讃えました。また実際には研究者はそれと自覚しながら不正を侵していて、「オンライン講習だけでは不正行為は防げない。研究現場における日々の実践や相互監視体制の確立の方が重要」とも指摘しました。さらに「なんと言っても肝心なのは議論。忌憚なく意見を言い合える土壌こそが、研究不正行為に歯止めをかけ、場合によっては阻止するのです」とまとめました。

何が公正な研究活動につながるかだけでなく、今後乗り越えなけなければならない課題についても両国の参加者の意見は一致を見ました。研究活動を取り巻く条件がその顕著な例で、論文発表の無言の圧力が不正の引き金となっています。これについてデバティン教授は「私たちにはネガティブデータの文化も必要です。ネガティブな結果も結果であることに変わりなく、失敗ではないのですから」と述べました。産業技術総合研究所(AIST)の松岡克典理事も「知的社会にはそれが不可欠」と賛意を表明しました。

意見交換

意見交換

© JST

活発な意見交換の締めくくりに、デバティン教授が意識向上と若手研究者への教育に対する日本のアプローチを讃えました。また実際には研究者はそれと自覚しながら不正を侵していて、「オンライン講習だけでは不正行為は防げない。研究現場における日々の実践や相互監視体制の確立の方が重要」とも指摘しました。さらに「なんと言っても肝心なのは議論。忌憚なく意見を言い合える土壌こそが、研究不正行為に歯止めをかけ、場合によっては阻止するのです」とまとめました。

何が公正な研究活動につながるかだけでなく、今後乗り越えなけなければならない課題についても両国の参加者の意見は一致を見ました。研究活動を取り巻く条件がその顕著な例で、論文発表の無言の圧力が不正の引き金となっています。これについてデバティン教授は「私たちにはネガティブデータの文化も必要です。ネガティブな結果も結果であることに変わりなく、失敗ではないのですから」と述べました。産業技術総合研究所(AIST)の松岡克典理事も「知的社会にはそれが不可欠」と賛意を表明しました。

DFGの広報・PR部Frieda Bergさん

スピーカの集合写真

講演者の集合写真

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