DFG事務総長ドロテー・ツヴォニック 日本訪問

日本の関係機関や大学と科学技術・学術政策について意見交換を行いました。

(2017年3月6日~10日)2017年3月6日から10日にDFG事務総長のドロテー・ツヴォニックが来日し、日本のパートナー機関や大学を訪問しました。DFG訪問団はツヴォニックのほかに、本部から科学総務部副部長 兼 化学・エンジニアリング部部長のヨハンナ・コヴォル=サンテン(Dr. Johanna Kowol-Santen)、国際交流部部長 兼 日本代表部代表のヨルク・シュナイダー(Dr. Jörg Schneider)、国際交流部コンプライアンス課課長のカトリン・コース(Kathrin Kohs)が同行しました。

Hiroko Hara, Josai International University

© DFG

DFGは現在、日本学術振興会(JSPS)と共同で3つの日独大学院プログラムを支援しており、このうちの一つで3月6日(月)に淡路夢舞台国際会議場で開催されたRWTHアーヘン工科大学と大阪大学のプログラム「Selectivity in Chemo- and Biokatalysis」のワークショップを視察しました。ツヴォニック事務総長とJSPS国際事業部部長の小林万里子氏は開会挨拶の中で、両国での共同研究における大きな意義とプログラムに秘められた可能性について強調しました。加えて、ツヴォニック事務総長はさまざまな経歴を持つ研究者同士が肩を並べて共同研究に励む、このような大学院プログラムはイノベーションの実現において他に類を見ない環境を生み出すであろうと述べました。

3月7日(火)城西国際大学紀尾井町キャンパスで同大学ジェンダー・女性学研究所と講演会を共催し、ツヴォニック事務総長はDFGの研究職における男女共同参画への取り組みの成果と事例について講演しました。講演会は城西国際大学大学院人文科学研究科の原ひろ子先生の開会挨拶で幕を開けました。日本の男女共同参画政策に大きく携わる科学技術振興機構(JST)副理事人財部ダイバーシティ推進室長であり、日本学術会議会員の渡辺美代子氏にもお越しいただきました。

3月8日(水)にはツヴォニック事務総長の来日を機に駐日ドイツ連邦共和国大使 ハンス・カール・フォン・ヴェアテルン (Dr. Hans Carl von Werthern)が主催した昼食会が大使公邸にて開催されました。昼食後は、科学技術・学術政策研究所を訪問し、日本の科学技術政策の重要課題についての理解を深めました。日本側からは科学技術立国ドイツにおけるエクセレンス・イニシアティブ政策についての成果やDFGの分野ごとの採択率や助成金の配分の割合の移り変わりについてなど、さまざまなテーマに大きな関心が寄せられていました。

同日の夜にはDFGの重要なパートナー機関の一部である総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の原山優子先生、JSPS国際事業部長の小林万里子氏、JST理事の白木澤佳子氏をお招きし、各国の助成機関同士の共同評価プロセス基準の構築の可能性やリード・エージェンシー協定などのテーマについて活発な話し合いがなされました。

最終日の3月10日(金)に数多くのノーベル賞受賞者を輩出している京都大学を訪問しました。京都大学では稲葉カヨ理事・副学長、三橋紫国際戦略副本部長を表敬訪問し、ハイデルベルグ大学、ゲッティンゲン大学、カールスルーエ工科大学、京都大学、大阪大学、東北大学から構成される日独大学コンソーシアム「HeKKSaGOn」の共同活動についての報告を受け、意見交換を行いました。文学研究科のビヨーン=オーレ・カム講師(Dr. Björn-Ole Kamm)、理学研究科の高橋淑子教授、法学研究科の髙山佳奈子教授、生存圏研究所の矢﨑一史教授はアジア、ヨーロッパ間の文化的交流がもたらす研究推進の力やドイツの大学との研究交流、国際共同学位プログラムの確立について、またそれらにエクセレンス・イニシアティブ政策がいかに重要な契機であったかについてなど、それぞれ自身の研究活動や経験談を紹介しました。ディスカッションでは特に若手研究者の助成支援、研究助成の条件、また国際的な場面でのDFGの役割に焦点が当てられ、活発な議論が交わされました。ドイツとの共同研究の成果は助成機関に申請する際にも日本では大変高く評価されており、日本の研究者が研究キャリアを構築していく上で、ドイツとの共同研究を重要視している事も報告されました。あらゆる分野において基礎研究を支援するDFGが大きな評価を得られていることを改めて確認するまたとない機会となりました。

そして、最後に今回の来日の重要な目的の一つであるツヴォニック事務総長による講演会「ドイツの科学研究の未来を考えて―エクセレンス・ストラテジーからイノベーション・多様性・卓越性の推進まで」が京都大学で開催されました。講演会はコヴォル=サンテンのDFGの組織と支援の説明から始まり、ディスカッションは交流会にまで続くほど大盛況で、近い将来、改めて日本のパートナー機関への訪問が実現化するような内容も飛び交いました。

講演会後は、ドイツ国立学術アカデミー・レオポルディーナの外国人会員の京都大学本庶佑客員教授をはじめ、同大学関係者の先生方、大阪・神戸ドイツ連邦共和国総領事館のヴェルナー・ケーラー総領事(Dr. Werner Köhler)、2015年ザイボルト賞受賞者、筑波大学の本澤巳代子名誉教授、ベルリン日独センター総裁、関西学院大学の神余隆博副学長を囲んでの夕食交流会を開催し、そこでは今後の日独の研究協力体制などが主に話題に取り上げられました。

今回の日本訪問では、DFGと日本のパートナー機関、ドイツと日本の研究者の間の強い信頼関係を再確認しただけでなく、将来に亘り、これらの関係がさらに向上していく可能性がより明確に感じられました。